2008-11-29 わずか9行で描かれる戦争と平和の物語/『石垣りん詩集』 書評:詩歌 「愛読書は石垣りんの詩集です」と語る女性がいれば、それだけで私はいっぺんに好きになってしまうことだろう。石垣りんの詩は、生活という大地にしっかりと足を下ろし、足の指が大地を鷲づかみにしているような力感に満ちている。そして、時にはこんな素敵な物語を紡ぎ出してくれる―― 戦闘開始 二つの国から飛び立った飛行機は 同時刻に敵国上へ原子爆弾を落としました 二つの国は壊滅しました 生き残った者は世界中に 二機の乗組員だけになりました 彼らがどんなにかなしく またむつまじく暮したか―― それは、ひょっとすると 新しい神話になるかも知れません。 【『石垣りん詩集』(ハルキ文庫、1998年)】 わずか9行で描かれる戦争と平和の物語だ。戦争という愚行を見事に表現しきっている。果たして人類は、たった二人だけになるまで戦争を続けるのだろうか? 石垣りん