古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

手柄岡持

 暑にまけずかみもそゝけずはたらきのその骨柄(こつがら)も一器唐扇(とうせん)
 手柄岡持(てがらのおかもち)


 麻生・小池編『川柳・狂歌』(昭和33年)所収。「唐扇(中国の扇子)をもらひて」と題した狂歌。「暑さに負けず、紙も手ずれでそそけだったりせず、骨組みも使い具合がよく、まさに一騎当千の唐扇だ」。さらに別の意味も詠みこむ。「暑気に負けず、髪も乱れてそそけたりせず、働きのいい体格で、まったく君は一騎当千の士だ」。扇を贈ってくれた相手をもほめたのだ。岡持は武士で黄表紙作者としても有名な人だった。


【『折々のうた 第十』大岡信編(岩波新書、1992年)】


折々のうた〈第10〉 (岩波新書)