古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

スーザン・ソンタグ


 1冊読了。


 54冊目『他者の苦痛へのまなざしスーザン・ソンタグ/北條文緒訳(みすず書房、2003年)/戦争写真に関する哲学的考察が繰り広げられる。しなやかで強靭な鞭(むち)のような知性が読者に襲い掛かってくる。無惨な映像を目の当たりにした時の心の揺れを的確に捉え、写真の欺瞞性を暴き、イメージに支配される心理を探る。写真は切り取られた事実ではあるものの、それは異なる位相となって我々の生活に侵入してくる。写真を見た瞬間に我々はカメラを持つ者と同じ視線に閉じ込められてしまうのだ。「他人の目を通して見る事実」と言っていいだろう。写真や映像は果たして千里眼と言い得るだろうか?