3冊読了。
19冊目『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子(平凡社新書、2009年)/平凡社の本は実に読みやすい。アグロバイオとは農業関連生命工学のこと。遺伝子組み替え技術を駆使した「種業者」のことで、代表的なのはアメリカのモンサント社だ。ターミネーター技術を施された種は、2世代目の種に毒ができ自殺するスイッチを入れるとのこと。つまり、「毎年、種を買わざるを得なくなる」ってわけだ。TPPが実施されれば、米国内で禁じられているものも日本へ流入してくることだろう。ゆくゆくは種がマネーのように流通する可能性も指摘されている。ただ、最初から最後まで市民的な正義感が勝ちすぎていて、読みながら疲れを覚える。
20冊目『孟嘗君 5』宮城谷昌光〈みやぎたに・まさみつ〉(講談社、1995年/講談社文庫、1998年)/昨夜読了。全5冊を5日間で読み終えた。最終巻は意外にあっさりしている。田分が一気に年をとるため、時々「アレっ?」となる。ヤスパースが名づけた枢軸時代の息吹きが伝わってくる。宮城谷作品は吉川英治よりも金庸に近い。歴史小説の正確さと、武侠小説のドラマ性を併せ持つ。
21冊目『智恵からの創造 条件付けの教育を超えて』J・クリシュナムルティ/藤仲孝司〈ふじなか・たかし〉、横山信英、三木治子訳(UNIO、2007年)/クリシュナムルティ作品の殆どにレビューを書いている「エヴァンジル」という人物について、翻訳家の大野龍一は藤仲関係者と推察している。大野によれば、大野純一も劣悪な人物であるとのこと。正しい人物(クリシュナムルティ)の周囲には胡散臭い連中が集まるのかもしれない。「訳者のあとがき」は40ページにも及ぶ。この註解だけで10ページもある。言葉巧みな自己主張にすぎず、他の翻訳家を貶めることで自分たちを持ち上げようと企図している。藤仲という人物の志は限りなく低い。序盤の訳はぎこちなくて読みにくいが、中盤以降は問題なし。クリシュナムルティの意を知らぬから、情報をてんこ盛りにせざるを得ないのだろう。クリシュナムルティ本はこれで45冊目。