古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

木村元彦 の検索結果:

オシムの戦争観

…るいは外国での指導に必要な他文化に対する許容力の高さをそこで改めて得られたのではないか。 「確かにそういう所から影響を受けたかもしれないが……。ただ、言葉にする時は影響は受けていないと言ったほうがいいだろう」 オシムは静かな口調で否定する。 「そういうものから学べたとするのなら、それが必要なものになってしまう。そういう戦争が……」 【『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社インターナショナル、2005年/集英社文庫、2008年)】

人間を民族や部族、宗派の違いだけで憎むことの愚かさ

…は大きな問題じゃないよ。周囲はいろいろ言うし、教義については深い違いがあることも知っている。でも僕は、そのことで対立したり仲たがいをするのなら、そんな違いすら知らずに生きてゆきたいんだ」 湾岸戦争が勃発(ぼっぱつ)したのが8歳のときというムナージドは、物心ついたときから、戦火の中でのフットボールを強(し)いられてきた。人間を民族や部族、宗派の違いだけで憎むことの愚(おろ)かさを、体験で実感している。 【『蹴る群れ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(講談社、2007年)】 木村元彦

日本人のメンタリティー

老指揮官はいつになく厳しい口調でこんなことを言った。 「日本人は平均的な地位、中間に甘んじるきらいがある。野心に欠ける。これは危険なメンタリティーだ。受身過ぎる。(精神的に)周囲に左右されることが多い。フットボールの世界ではもっと批判に強くならなければ」 【『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社インターナショナル、2005年/集英社文庫、2008年)】 木村元彦 (※左が単行本、右が文庫本)

名前のない悲劇

キーボードを一心不乱に叩きながら彼女は語る。 「一番大きな問題は私たちのこの悲劇には名前がついていないことです。世界の注目どころか、国内でも無視され切り捨てられている」 名前さえもついていない問題。確かにコソボ難民という言い方をすれば、ほとんどの外国人はアルバニア系住民のことを指すと思うだろう。 【『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社新書、2005年)】

ヨアン・アンドネの抗議行動

…スク大統領の長男に向けて下半身を見せる抗議行動。否(いな)、侮蔑(ぶべつ)行動――いったいどんな恐ろしい粛清が待ち受けているのか。 アンドネにとって幸運だったのは、ヴァレンティンのお気に入りだった〈ステアウア〉のFWマルウス・ラカトシュと仲が良かったことだった。代表の右ウイングで勇躍していたラカトシュは、試合さながらに快速をぶっ飛ばしてヴァレンティンに駆け寄り、必死に友人の非礼を詫(わ)びて罪の軽減を訴えた。 【『蹴る群れ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(講談社、2007年)】

2009年に読んだ本ランキング

…45位 『蹴る群れ』木村元彦 46位 『裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記』山口絵理子 47位 『「パレスチナが見たい」』森沢典子 48位 『「経済人」の終わり』P・F・ドラッカー 49位 『エロスと精気(エネルギー) 性愛術指南』ジェイムズ・M・パウエル 50位 『死と狂気 死者の発見』渡辺哲夫 51位 『脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦』宮本省三 52位 『無責任の構造 モラル・ハザードへの知的戦略』岡本浩一 53位 『ゾーン 「勝つ」相場心理学入門』マーク・ダグ…

新聞記者は戦争を始めることができる

「言葉は極めて重要だ。そして銃器のように危険でもある。私は記者を観察している。このメディアは正しい質問をしているのか。ジェフを応援しているのか。そうでないのか。新聞記者は戦争を始めることができる。意図を持てば世の中を危険な方向に導けるのだから。ユーゴの戦争だってそこから始まった部分がある」 【『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社インターナショナル、2005年/集英社文庫、2008年)】

名前すら付与されない悲劇

キーボードを一心不乱に叩きながら彼女は語る。 「一番大きな問題は私たちのこの悲劇には名前がついていないことです。世界の注目どころか、国内でも無視され切り捨てられている」 名前さえもついていない問題。確かにコソボ難民という言い方をすれば、ほとんどの外国人はアルバニア系住民のことを指すと思うだろう。 【『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社新書、2005年)】 木村元彦

イラクチームの快進撃を政治利用したブッシュ大統領/『蹴る群れ』木村元彦

…う。 【『蹴る群れ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(講談社、2007年)以下同】 ・『世界反米ジョーク集』早坂隆 イラク代表選手の多くは明朗かつ知的だった。その彼等がアメリカに対しては一様に怒りを露(あら)わにした。温厚なラザク・モサも「あの虐待の様子がテレビに映しだされたとき、もしも、すぐそばにアメリカ人がいたら、私はそいつを殺していたかもしれない」と語っている。 「無差別攻撃を受けて、サドルシティに住む私の友達は、3人が死に、2人が重症(ママ)を負った。デモクラシーとやらは…

オシムが背負う十字架/『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』木村元彦

…こうに人生が見える』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社インターナショナル、2005年/集英社文庫、2008年)】 ユーゴ代表チームにはセルビア人、クロアチア人、アルバニア人がいた。紛争が始まるや否や、チームメイトは敵国の人間となった。ジャーナリズムは国威発揚を隠そうともせず、好き勝手なサッカー記事を綴った。 そんな中でオシムはチームを牽引し、国家をも牽引した。サッカーの世界に人種は関係がなかった。 ユーゴスラビア紛争終結後もわだかまりの残る旧ユーゴスラビア構成諸国家内各民族…

ユースフ・イドリース、ナギーブ・マハフーズ、木村元彦

…83冊目『蹴る群れ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(講談社、2007年)/ベストセラーとなった『オシムの言葉』(集英社インターナショナル、2005年/集英社文庫、2008年)に続いて著したサッカー・ノンフィクション。こっちの方がはるかに面白かった。私はサッカーをまったく観ないし、興味すらない。それでも、ここで紹介されている20人になんなんとする人生の春秋には、涙を禁じ得なかった。世界を股にかけるサッカー・プレイヤーの何と逞しいことか。彼等は同じフィールドにあっても立っている大地…

バルカンのホスピタリティ/『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』木村元彦

…ア人を迫害している。木村元彦によれば、何と3000人ものセルビア人が行方不明となっているとのこと。 取材に応じているセルビア人は皆冷静であり、フェアな考え方をしている―― ジンジッチ(※セルビア共和国大統領)の決断は、米国からの援助(約5000万ドル)と引き換えに国内法を無視したものだとベリツエは憤る。 「ミロシェビッチの戦争犯罪については、私たちセルビア人も何が行われたのか知りたいし、彼は裁かれるべきです。しかし、一方で同じように私たちセルビア民族の民間人を誘拐したり、殺し…

木村元彦

1冊挫折。 挫折41『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社新書、2005年)/期待していたのだが読みにくかった。80ページで挫ける。多分、圧倒的な事実を前にして、著者が物語化できなかったのではないかと思う。文章が、『オシムの言葉』に遠く及ばない。コソボ紛争は調べる必要あり。

四方田犬彦、木村元彦、高橋克彦

…冊目『オシムの言葉』木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社インターナショナル、2005年/集英社文庫、2008年)/私はサッカーには全く関心がないのだが、オシムには以前から興味を抱いていた。何とはなしに「ブッダはこんな感じの人だったんだろうな」と思った。知性とユーモア、そして通奏低音に流れるニヒリズム。オシムはサラエボで生まれた。紛争が暗い影を落とす中でオシムは監督として指揮を執った。やがて祖国は戦乱の舞台と化した。スポーツが政治に翻弄される。チームメイトの国が敵国となる。日本…

文庫化『オシムの言葉』木村元彦(集英社文庫)

「リスクを冒して攻める。その方がいい人生だと思いませんか?」「君たちはプロだ。休むのは引退してからで十分だ」――サッカー界のみならず、日本全土に影響を及ぼした言葉の数々。弱小チームを再生し、日本代表を率いた名将が、秀抜な語録と激動の半生から日本人に伝えるメッセージ。文庫化に際し、新たに書き下ろした追章を収録。ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞作。

『世界反米ジョーク集』早坂隆

…大統領/『蹴る群れ』木村元彦 「敵」は「モノ」になる。ここに覇権国家の恐ろしさがある。憎悪はアイデンティティによって支えられている。いつの日か必ず手痛いしっぺ返しに遭うことだろう。 ジョークの世界では、20世紀後半の主役はソ連だった。スターリンやフルシチョフは絶好の笑いの標的となり、ヨーロッパを中心として世界各国で楽しまれた。それが21世紀を迎えた今、主役はアメリカへと移行した。反米ジョークによってアメリカは世界中の人々に笑われている。 アメリカが揶揄されている現実は、既に崩…