古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

四方田犬彦、木村元彦、高橋克彦


 1冊挫折、2冊読了。


 挫折40『見ることの塩 パレスチナ・セルビア紀行四方田犬彦〈よもた・いぬひこ〉(作品社、2005年)/20ページで挫ける。文章が冗長で肌に馴染まない。著者の周りにいるユダヤ人がイスラエル・コンプレックスを持っているとのこと。


 78冊目『オシムの言葉木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社インターナショナル、2005年/集英社文庫、2008年)/私はサッカーには全く関心がないのだが、オシムには以前から興味を抱いていた。何とはなしに「ブッダはこんな感じの人だったんだろうな」と思った。知性とユーモア、そして通奏低音に流れるニヒリズムオシムサラエボで生まれた。紛争が暗い影を落とす中でオシムは監督として指揮を執った。やがて祖国は戦乱の舞台と化した。スポーツが政治に翻弄される。チームメイトの国が敵国となる。日本人プレイヤーとは背負っているものが違う。それにしても、オシムの言葉は含蓄に富んでいる。


 79冊目『時宗 巻の四 戦星高橋克彦NHK出版、2001年/講談社文庫、2003年)/これが最終巻。一気読み。政(まつりごと)小説がこの巻に至って戦争小説と化す。創作と思われるが、北条時輔マルコ・ポーロの邂逅が面白かった。タイトルは時宗となっているが、内容は北条時頼父子鷹(おやこだか)である。縄田一男が解説で「この作品が正(まさ)しく21世紀の歴史・時代小説の劈頭(へきとう)を飾るにふさわしい偉容とスケールを誇っている」と書いているのも頷ける。いまだ天下が統一されていない時代に、国を背負った男達が存在した。