名前のない悲劇

 キーボードを一心不乱に叩きながら彼女は語る。
「一番大きな問題は私たちのこの悲劇には名前がついていないことです。世界の注目どころか、国内でも無視され切り捨てられている」
 名前さえもついていない問題。確かにコソボ難民という言い方をすれば、ほとんどの外国人はアルバニア系住民のことを指すと思うだろう。


【『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ木村元彦〈きむら・ゆきひこ〉(集英社新書、2005年)】