2冊挫折、2冊読了。
挫折29『マクロ経済学を学ぶ』岩田規久男(ちくま新書、1996年)/文章が肌に合わず、あっという間に挫ける。
挫折30『世界デフレは三度来る(上)』竹森俊平(講談社BIZ、2006年)/講談社がやたらとネーミングを変えて刊行しているが、驚くほど活字が読みやすくなった。ま、以前が酷かったからね。特に講談社文庫の読みにくさは多くの人々が指摘していた。上下で1100ページの大冊。20世紀の経済史を揺るがす出来事がドラマチックに綴られている。この著者は相当頭がいい人だ。文章のあちこちに自信が漲(みなぎ)っている。文章もいい。それでも250ページで挫ける。歴史に重点が置かれていて、当てが外れたというのが本音である。秀逸なマクロ経済史にもなっているので再読するかも。
60冊目『良心の領界』スーザン・ソンタグ/木幡和枝〈こばた・かずえ〉訳(NTT出版、2004年)/高橋源一郎著『13日間で「名文」を書けるようになる方法』の冒頭で紹介されている文章をどうしても読みたくて速効で入手。「若い読者へのアドバイス……」と題された序文である。高橋本で全文紹介されているのだが、この4ページを読むだけでも価値がある。柔らかいこと、しなやかであることが強さであることを見事に証明している。人は善良であればあるほど煩悶(はんもん)し、懊悩(おうのう)する。かつて「わかりやすい正義」が正義であった例(ためし)がない。彼女とクリシュナムルティの対談が実現していたら──と思わずいはいられなかった。ただし、田中康夫を買い被っているのは頂けない。
61冊目『知恵のめざめ 悲しみが花開いて終わるとき』J・クリシュナムルティ/小早川詔〈こばやかわ・あきら〉、藤仲孝司〈ふじなか・たかし〉訳(UNIO、2003年)/クリシュナムルティ30冊目の読了。日本語訳はあと10冊ほどしかないはずだ。録音された講話で原書に補完を加えた労作。生々しい言葉の揺らぎから、クリシュナムルティの思想を読み解こうとする姿勢は高く評価していいだろう。ただ、「訳者あとがき」で延々と言いわけをして、他の翻訳を悪し様に言う姿勢は大いに疑問だ。その独善性にクリシュナムルティの教えを見て取ることは不可能だ。大体、藤仲が単独で翻訳したものは滅茶苦茶な文章が多く、朗読するのも一苦労させられる。この二人は翻訳と通訳とを明らかに勘違いしている。大野純一訳は癖があるものの、はるかに読みやすい。本書は話し言葉で綴られているため、読みにくい上、難解な表現が数多く見受けられる。私が読んできたものの中では一番難しかった。