メアリー・ルティエンス、井村和清


 2冊読了。


 15冊目『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス/高橋重敏訳(めるくまーる、1990年)/伝記三部作の最終章。1980年から亡くなるまでの6年間が綴られている。読み物としては少しも面白くない。多分、資料が多過ぎたせいだろう。内容が散漫な上、人物像の全体性が浮かんでこない。だがこれは、メアリー・ルティエンスだけの責任とは言えない。クリシュナムルティは組織を作らなかったために、思想の広まる様子がつかみにくいことを見逃すわけにはいかないだろう。ロスアラモスの国立研究調査センター(原子爆弾の開発を目的として創設されたアメリカの国立研究機関)での講話は真剣勝負そのもので、微塵の妥協も許さぬ内容であった。いずれにせよ、この三部作はスピリチュアル色が強いので、しっかりとクリシュナムルティの思想を学んでから読むことを勧める。



 16冊目『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ 若き医師が死の直前まで綴った愛の手記』井村和清(祥伝社ノンブック、1980年/祥伝社、2005年)/30年前のミリオンセラー。田坂広志の講演“なぜ、我々は「志」を抱いて生きるのか”で紹介された件(くだり)を確認するために読んだ。31歳で死んでゆかねばならなかった医師が、2歳の娘と身ごもった子へのメッセージを綴った遺稿集。元々は私家版だったとのこと。井村和清は最後の最後まできれいな生き方を貫いた。私は彼よりも15年多く生きているが、そのこと自体が恥ずかしく思えた。長女も既に彼より長生きしているのだ。10代、20代の若者に読んでもらいたい作品である。