古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

アーディラ・ラーイディ


 1冊読了。


 102冊目『シャヒード、100の命 パレスチナで生きて死ぬこと』アーディラ・ラーイディ著、イザベル・デ・ラ・クルーズ写真/岡真理、岸田直子、中野真紀子訳(「シャヒード、100の命」展実行委員会、2003年)/2000年9月末に始まった第二次インティファーダ(民衆蜂起)で亡くなった最初の犠牲者100人を追悼する作品である。同名の美術展とタイアップしている。左ページには故人の写真が配され、人となりを紹介。右ページには遺品の写真が掲載されている。たったそれだけの、新聞の訃報欄を拡大したような作りではあるが、胸に迫ってくる何かがある。殺されたパレスチナ人が固有の顔を持って私の前に立ち現れるのだ。写真の眼が読み手を見据える。「なぜ、僕が死ななければならかったの?」と。68歳のドイツ人から始まり、ページをめくるごとに死者は若くなる。彼等の未来は失われた。そして読み手は「失った未来」を直視させられるのだ。シャヒードの語源は「誠実な証人」という意味らしい。今では「殉教者」を指している。大半がデモ行進の最中に狙撃されている。罪なきパレスチナ人の紙碑(しひ)といってよい。それにしても、200ページあまりで2100円は高すぎる。発売元はインパクト出版会になっているが紙質もよくない。何らかの事情があったのかもしれないが、パレスチナの惨状を広く知らしめるのが目的であれば、1000円程度にすべきだろう。まったくもって愚の骨頂だ。