古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

ジョージ・アームストロング、小松美彦、森沢典子


 2冊挫折、1冊読了。


 挫折51『ロスチャイルド世界金権王朝 極世界支配の最奥を抉る!』ジョージ・アームストロング/馬野周二〈うまの・しゅうじ〉監訳(徳間書店、1993年)/陰謀モノだった。陰謀論はいつも思い詰めている。思い詰めているから一つのストーリーしか想像できない。そして、全ての情報を一つのストーリーに無理矢理はめ込んでしまうため窮屈で仕方がない。イルミナティを出すのが早すぎる(笑)。もっと思わせぶりに描くべきだ。馬野周二という人物を初めて知った。100ページほどで挫ける。


 挫折52『死は共鳴する 脳死・臓器移植の深みへ小松美彦〈こまつ・よしひこ〉(勁草書房、1996年)/この人は論者だと思う。文章に締まりがない。多分、いい内容だとは思うが性格が合わないと判断した。


 104冊目『「パレスチナが見たい」』森沢典子(TBSブリタニカ、2002年)/これはよかった。パレスチナ入門として最適。幼稚園教諭の著者が、突然パレスチナ行きを断行する。それもたった一人で。現地で広河隆一を訪ねるが基本的に一人だ。3週間の旅で森沢が見たのは、非道極まりないユダヤ人と静かに抵抗し続けるパレスチナ人の姿だった。ここに書かれているのは、「普通の人の視線」に映ったパレスチナの一部である。それゆえ、パレスチナの日常風景といってよい。森沢の筆致は慎重かつ丁寧で、自省が込められている。いたずらに、イスラエルを糾弾する姿勢は微塵もない。その森沢の悲痛な思いを汲んだとしても、私は反ユダヤ主義にならざるを得ない。真のヒューマニズムは必ずや反ユダヤ主義を志向する。