2冊挫折、2冊読了。
『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』太田直子/何となく30ページほど読んで挫けた。文章は読みやすいのだが、どうも肌が合わない。二つの大冊と取り組んでいることもあって切り捨てた。
『詐欺師入門 騙しの天才たち その華麗なる手口』デヴィッド・W・モラー/詐欺師の手口を書いた作品。専門用語にたじろぐ。適当な日本語訳にすべきだ。そうでないと意味がわからなくなってしまう。例えば、〈コン・モブ〉〈ビッグ・ストア〉〈おとり〉〈インサイドマン〉〈ビッグ・コン〉〈ブックメーカー〉〈サクラ〉〈ボードマーカー〉〈カモ〉〈マネージャー〉〈グリフター〉〈フィクサー〉など。これが1ページに記されている言葉だよ。映画『スティング』にヒントを与えたというので結構期待していたのだが、見事に外れた。
『失語症者、言語聴覚士になる ことばを失った人は何を求めているのか』平澤哲哉/著者は大学生の時に、交通事故で頭蓋骨を陥没骨折した。その際の脳出血で失語症となる。ひとたびは言葉を失いかけた著者がリハビリに挑戦しながら、少しずつよくなっていく様子が描かれている。言語聴覚士(ST)になったというのだから大したものだ。一般的には脳の左半球にダメージがある(右半身麻痺)と失語症になるケースが多い。ただし、言語野は利き腕によって変わるので例外もある。体験記となっているので致し方ないが、個人的には失語症のメカニズムを知りたかったというのが本音である。
『太平洋の旭日』パトリシオ・エイルウィン、池田大作/今年の1月から読み始めたので、何と8ヶ月間もかかって読み終えたことになる。きっかけは「ヌエバ・カンシオン」だった。エイルウィン氏は元チリ大統領。ピノチェト政権を支えた時期もあったが、紆余曲折を経てチリの民主化を成し遂げた。米国からの圧力を知る人物でもある。強靭な意志もさることながら、深い見識と謙虚な人柄が伝わってくる。真の政治家を仰ぎ見る思いがした。往復書簡を会話形式に直した箇所もあるため、少々読みにくく難解なところもあるが、未来を見据えた“明るい展望”を語る議論に救われる思いがする。