古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

ニュース拾い読み・書き捨て 31

ジダンの頭突き


 サッカー・ワールドカップでの決勝戦で、フランスのジダンがイタリア選手に頭突きを食らわせ、物議を醸(かも)している。


 ジダンはワールドカップをもって引退することを既に表明していた。選手としての最後の試合が、レッドカードで幕を閉じるとは誰一人予想し得なかった。また、ジダンがアフリカからの移民といういこともあって、イタリア選手が人種差別発言をした可能性もあると報じられていた。


 私が受けた印象では、7対3ぐらいでジダンの肩を持つ人が多いね。頭突きを食らった選手は、いかにも軽薄なイタリア野郎って顔つきだし……。


 このことから明らかなのは、「理由があれば、暴力を振るっても構わない」と多くの人々が思っていることだ。ワールドカップやオリンピックは、既にスポーツの祭典ではなく、国威発揚の場と化している。当然ながら利権も大きい。


 鬱積した民衆の感情はカタルシスを求める。かような状況になると、一気に右傾化することも珍しくはない。例えば、北朝鮮問題だ。日本人にとっては政治問題である前に、拉致被害に遭ったという感情問題が先に出てしまう。これは当然のことだろう。


 しかし、政治家がその国民感情を政治的に利用しようとすることは避ける必要があるのではないか?


 言葉の暴力が、行動の暴力を生み、暴力の連鎖に拍車をかける。そして、試合を見ている国民にも暴力的な衝動が芽生えることが恐ろしい。


 サッカーは嫌いなスポーツだが、ジダンは好きなプレーヤーだ。「地弾」という名前を進呈したい(笑)。