古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

朝日新聞久々のヒット!


▼いつもこき下ろしてばかりいるので、たまには持ち上げることにしよう。6月4日付の天声人語が好かった。歯痛の話し▼「あの痛みは孤独な痛みだ。なぜかあまり同情されない。まわりは何と自己中心的な奴(やつ)ばかりなのだ、と歯ぎしりしても痛みが増すばかりだ」▼誰もが共感できる内容だ。歯痛に悩まされると周囲の雰囲気は確かに消去されてしまう。「孤独な痛み」とは言い得て妙▼ここでドストエフスキーの『地下室の手記』が引用される。記者子によれば「何といっても、初めて? 歯痛の『哲学的考察』をした作品」とのこと▼曰く「歯痛にだって快楽はあるさ(江川卓訳)」。「おまえたちも、いっそ眠らないで、おれが歯が痛いんだということを、四六時中感じつづけるがいいさ」▼実存的な思考が「結局、人間とは何と弱いものか」と結論される。この日から“歯の衛生週間”だってさ。ニヤリ。


▼だが、前日のエラーを見逃すわけにはゆくまい(6月3日付社会面)▼おわび記事。以下。「5月29日付夕刊『殴られ4歳死亡』の◯◯◯ちゃんの顔写真は、近所に住む別の4歳児のものでした」▼苦笑を禁じ得なかった。いまだにこういうことがあるんですな▼誤って掲載された子供の家族は、どんな顔をしたんだろうねえ▼新聞記事に写真が必要ではない見事な証拠と思うがいかが?