亀田大毅とメディアの豹変/『テレビ救急箱』小田嶋隆

 テレビはいつだって「利用できる人」を探している。少しばかり注目が集まると、直ぐにハシゴをかける。で、雲行きが怪しくなった途端、ハシゴを外してみせるのだ。

(※亀田)大毅の態度は擁護できない。容認もできない。が、パンチは、自分に返って来る。ボクサーというのはそういう存在だ。ボクサーである以上、下品なマナーはファンの反発を買うし、分不相応な大言壮語は赤っ恥の原料になる。天に向かって吐いた唾は残らず自分の顔に落ちて来るし、傲慢は惨敗というこれ以上ない屈辱として、わが身に返って来る。おまけに反則はライセンス停止を招き、不用意な切腹発言は、本人の背中に臆病者の烙印を焼き付ける結果になった。で、ひっくり返った亀は、二度と起きあがれない。あわれだ。
 一方、亀の背中に乗って竜宮城で遊んでいた連中は、まったくの無傷だ。
 みのもんたは、一番はじめに手の平を返した。テリー(伊藤)に至っては、亀田を非難するのみならず、TBSはぬるいとまで言い切った。これまでずっとそのTBSの番組内で全力を挙げて亀田を擁護し、亀田関連の仕事で一番潤ってきたのがほかならぬ自分自身であるにもかかわらず、だ。


【『テレビ救急箱』小田嶋隆中公新書ラクレ、2008年)】


 ブラウン管の向こう側にいるのは、「泳ぐのが巧み」な連中ってこと。彼等はテレビ局の意向に従って、踏みつけるべき人を踏みつけながら、この世を渡り歩いているのだ。


 それにしても、小田嶋隆のこの「亀」技は圧巻。