アナログの意味/『コンピュータ妄語録』小田嶋隆


 コンピュータ用語の辞典。これは本の体裁がダメ。新書版サイズの辞書として作るべきだ。そうすりゃ、騙されて購入する人々も増えたことだろう。驚いたことにネタ満載と思いきや、まともな辞書としても使える内容となっている。惜しむらくは既に古い情報となっていることだが、意外と無視して読めるのだから、オダジマンの筆力恐るべし。

【アナログ】Analog


「連続量的な」ということ。
 物理量への置き換えによる量表現。
 ね、わからないでしょ。
 だったら、89ページの「デジタル」の項を読んでください。
 ……というのもあんまり無責任だから、ごく簡単に。
 Analogなる言葉は、そもそも「比率」を意味するギリシア語Analogosから派生した言葉で、同根の語にAnalysis(分析、解析)、Analogy(類比、類推)があることからもわかる通り、気分としては、「比喩」だとか「置き換えて表現する」ぐらいの心意気があるわけです。
 たとえば、デジタル体温計は「36.5」と、体温を数字でストレートに表現するが、アナログ体温計は、「水銀柱の長さ」という物理量に置き換えて体温を表現している。
 この他、アナログ時計は「時刻」を「針の角度」で表現し、砂時計は「時間」を「砂の量」で測定し、アナログシンセサイザは「音声」を「波形」で扱い、アナログ野郎は「感情」を「顔色」で表出している。
 ということは、これらはどれも皆、ある物理量への置き換えを行っているのであるからして、アナログなのである。
 なお、「肛門」を意味する「アナル」とは、とりあえず無関係と思われるが、あいつもあれで案外「連続量的な物理表現」をしたりするからあなどれない感じはする。


【『コンピュータ妄語録』小田嶋隆ジャストシステム、1994年)】


 尚、アナロジーについては、養老孟司の『カミとヒトの解剖学』が必読テキスト。


コンピュータ妄語録