古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

パトリック・ジュースキント


 1冊読了。


香水 ある人殺しの物語パトリック・ジュースキント/めくるめく「匂いの物語」。舞台は悪臭紛々たる18世紀のフランス。“匂いの魔術師”ともいうべき男の一代記である。芝居がかった言い回しに魅了される。『スカラムーシュ』『モンテ・クリスト伯』を思わせる。池内紀の翻訳が絶品。匂いのためとあらば人殺しも辞さない悪党が、万人を魅了してやまない匂いを創り出す。匂いのために犯される罪と、匂いのための求道というコントラストが鮮やか。ページを開いている間は、物語が奏でる至福の時を過ごすことができる。