極端な集中が国家を崩壊する/『2010年 資本主義大爆裂! 緊急!近未来10の予測』ラビ・バトラ

 前々から読みたかった一冊。ラビ・バトラといえば、ややトンデモ本っぽい印象を抱いていたのだが、経済学博士だけあってさすがに分析はしっかりしている。ヒンズー教徒としての瞑想にも触れているが、目くじらを立てるほどではあるまい。米国ではいずれの作品もベストセラー入りしている。数々の予言を的中させているが最も有名なのは、「どんなに遅くとも2000年までに共産主義は断末魔の苦しい革命を経て崩壊し、2010年までに資本主義は崩壊する」というもの。

 ここで明らかにしておきたいのは、共産主義も資本主義も、崩壊の引き金となるのは「極端な集中」だということだ。


【『2010年 資本主義大爆裂! 緊急!近未来10の予測』ラビ・バトラ/ペマ・ギャルポ藤原直哉訳(あ・うん、2008年)】


 あまりにも基本的な指摘に目からうろこが落ちる思いがする。結局のところ、税の目的である所得の再分配が上手くいってないところに問題の根っこがあるのだろう。


 例えば、昨年の夏まで日本経済は緩やかなカーブを描いて成長していたはずだ。輸出もそれなりに順調だったと記憶している。だが、働くサラリーマンの賃金の上昇にはつながらなかった。では、企業の利益はどこへ行ったのであろうか? 多分、企業の内部留保になっているのだろう。サブプライム・ショックに端を発し、昨今の原材料高騰がダブルパンチとなって、先の見通しがつかない。その上、銀行がまたぞろ貸し渋りし始めた。


 経済成長が覚束なければ、マネーの動きは鈍る。こうなると、血液の循環が鈍くなった身体と同じだ。手足の指先が冷え込み凍傷が起こる。社会保障費のカットはまさしく“凍傷”そのものだ。


 グローバリゼーションの波に流されることなく、国内でマネーが循環する仕組みを考える必要がある。また、国家や業種といった枠組みで、現物商品高騰に対するヘッジとしての投資活動行うことも必要だ。


 いずれにしても、この国の政治が変わらない限り、何も始まらないことだろう。所得の再分配が上手くいってないのは、政治が利権に侵されている証拠である。