古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

キリスト教

米国における天地創造と進化論/『神と科学は共存できるか?』スティーヴン・ジェイ・グールド

同じクリスチャンでも欧米には落差がある。アメリカはモルモン教に見られるように原理主義的であり、独善的だ。 ・モルモン教 そのため、米国が行う蛮行は“正義の名の下”に実行され、「神が書いたシナリオ」として事後承認される。主よ、あなたは後出しジャ…

モルモン教の創始者ジョセフ・スミスの素顔/『信仰が人を殺すとき』ジョン・クラカワー

正式名称は「末日聖徒イエス・キリスト教会」。「モルモン書」と呼ばれる預言書を信じるがゆえにモルモン教とも称されている。日本だけで、何と320もの教会がある。 アメリカで実際にあった事件を辿ったノンフィクション。妻と幼い娘を殺害したのは実の兄弟…

米国では大人の半分が天地創造を信じている/『赤ちゃんはどこまで人間なのか 心の理解の起源』ポール・ブルーム

アメリカ南部では、ダーウィンの『進化論(正式名称は「種の起源」)』を掲載している教科書が採用されないことは知っていた。でもまさか、大人の半分が神による天地創造を信じているとはね。 とはいえ、この説(ダーウィンの自然選択説)を絶対に受け入れな…

江原啓之はヒンドゥー教的カルト/『スピリチュアリズム』苫米地英人

タイトルは『スピリチュアリズム』となっているが、内容は「反スピリチュアリズム」。苫米地英人が警鐘を鳴らしているのは、「江原啓之を受け入れてしまう社会情況」に対してである。オウム後に現れたカマイタチといっていいだろう。 江原啓之氏などの言って…

イエスは“感謝の人”だった/『キリスト教思想への招待』田川建三

田川建三の威勢のよさは好きなんだが、論理の飛躍があるため、どうしても説教臭い印象を受けてしまう。また、同じ主張の繰り返しが目立ち、小うるせえ年寄りみたいだ。 古代人が、心をふるわせて、一つ一つの収穫のたびに、この自然をたまわったことについて…

『日本仏教史 思想史としてのアプローチ』末木文美士

中国から日本へ仏教が輸入された頃から、江戸時代までを俯瞰した内容。平安時代・鎌倉時代に重点を置いている。 寡聞にして知らなかったのだが、鎌倉仏教の殆どが密教の影響を受けている。また、天台大師の本覚思想を色濃く反映するなど、明らかな思想的変遷…

『青い空』海老沢泰久

・『殉教 日本人は何を信仰したか』山本博文 ・『勝海舟』子母澤寛 ・『青い空』海老沢泰久・『庶民信仰の幻想』圭室文雄、宮田登 ・『黄金旅風』飯嶋和一 ・『日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか』小室直樹 ・『氷川清話』勝海舟 …

『沈黙の行方』

監督:トム・マクローリン 出演:アンディ・ガルシア 心理サスペンス。キリスト教の要素が非常に色濃く表れている。「救い」という結末のために、わざわざこれほどの状況を作り出すとは本末転倒のような気がする。 冒頭と、第3コーナーの面会シーンが、まあ…

『ソウ/SAW』

監督:ジェームズ・ワン アメリカ 期待し過ぎて失敗。アメリカ以外の国で作ってくれれば、もっとまともな作品になったはずだ。“間抜け”を基調とするアメリカ映画は、短気な日本人には馴染まないのだ。 犯人を殺せる機会は何度も出てくる。だが、間抜けな連中…

『デイ・アフター・トゥモロー』

・監督・脚本:ローランド・エメリッヒ 『デイ・アフター・トゥモロー』をビデオで見た。 ハリウッド映画の多くは、地球外生物と戦闘状態となり、最後に核兵器を使用する「ペンタゴン御用達(ごようたし)映画」と、世界が終末を迎え、登場人物の誰かが神様…

『パッション』メル・ギブソン監督

【7点】 ・出演:ジム・カヴィーゼル、マヤ・モルゲンステルン タダ券があったので、最終日ギリギリで『パッション』を見てきた。ぱ・る・るプラザMACHIDAにて。この映画館、何をもったいぶってんだか、入場整理券を配ってから、わざわざ案内人を立てて、観…

『マトリックス・レボリューションズ』ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー監督

・『マトリックス・レボリューションズ』ラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー監督・『マトリックス』三部作:ウォシャウスキー兄弟監督(1999年) ・『LUCY/ルーシー』リュック・ベッソン監督、脚本 【5点】 こりゃ、キリストのパロディだ…

「地の塩の箱」~理想と絶望のはざまを生きた詩人を追跡/『昭和の根っこをつかまえに』北尾トロ

このシリーズはオンライン・テキストで公開されている。飄々としたポップな文体で知られる北尾が、ややジャーナリスティックな構えで、平成に生き残る“昭和の根っこ”を捉えた作品。いずれの対象も“残滓(ざんし)”と軽々しく言うことがためらわれるような、…

「死生学」の権威が認める“尊厳死”に疑問/『死とどう向き合うか』アルフォンス・デーケン

ノリ太(英国でオンライン古書店を営む私の弟子)に薦められ、デーケンの本を始めて読んだ。「死生学」とは、死をどう捉え、どう理解するかを学ぶ学問。著者はドイツ生まれで現在、上智大学文学部教授。過去に、アメリカ文学賞(倫理部門)や菊池寛賞を受賞…

丸山健二と『マタイ受難曲』/『虹よ、冒涜の虹よ』丸山健二

・『メッセージ 告白的青春論』丸山健二 ・丸山健二と『マタイ受難曲』 丸山健二の『虹よ、冒涜の虹よ』(新潮社)に出てくる『マタイ受難曲』を遂に聴くことができた。私が借りてきたCDは、カラヤン指揮、ベルリン・フィル・ハーモニーによる演奏である。検…

『思考のレッスン』丸谷才一

知識の豊富な人の本だから、まあ、それなりには面白い。読んで損はしないと初めに断っておこう。レッスンというタイトルがついているものの、押しつけがましさは全くない。その上、対談形式なので大変わかり易い。 読書に対して何を求めるかは人によって様々…

人間を操作する快感の末路/『心をあやつる男たち』福本博文

高度成長期にさかんに行われた管理職を特訓するST(センシティビティ・トレーニング)と、飽食の時代に入り横行した宗教的な手法を駆使する自己開発セミナー。これらがどのような時代背景の中で誕生し、如何なる社会問題へと至ったのか。あるトレーナーの半…