古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『ソウ/SAW』


 期待し過ぎて失敗。アメリカ以外の国で作ってくれれば、もっとまともな作品になったはずだ。“間抜け”を基調とするアメリカ映画は、短気な日本人には馴染まないのだ。


 犯人を殺せる機会は何度も出てくる。だが、間抜けな連中は、映画の時間を稼ぐために、何度も犯人を逃がしてみせる。


 囚われの身となった主人公の奥方も同様。なぜ、膝頭に一発、銃弾を打ち込んでおかないのだ? 自分達が危険な目に遭いながらも躊躇する姿に、正真正銘の愚かさを見た。


 ラストシーンも不自然極まりない。そもそも、ああした犯人の登場の仕方に必然性すらない。それに気づかないのも、また、おかしな話。もっといえば、どうやって、二人をあの部屋へ運んだというのだろう? そして、主人公がいくら狂気に走ったとはいえ、あんな真似などできるはずもなかろう。大体、妻子の居場所も知らないのだ。


“録音された音声による命令”によって、理不尽な運命に襲われるといった映画が、最近、多いですな。きっと、“神の声”を象徴しているのだろう。キリスト教文化を巧く取り込んでいるとは思う。


 筋書きがいいだけに惜しまれる。犯罪の残酷さとは正反対に、犯人の主張が正しいところも秀逸。


 短気でない方であれば、かなり堪能できることだろう。