古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『デイ・アフター・トゥモロー』

・監督・脚本:ローランド・エメリッヒ


デイ・アフター・トゥモロー』をビデオで見た。


 ハリウッド映画の多くは、地球外生物と戦闘状態となり、最後に核兵器を使用する「ペンタゴン御用達(ごようたし)映画」と、世界が終末を迎え、登場人物の誰かが神様を象徴する「キリスト教的戯画作品」に分かれるというのが私の持論だ。


 この作品は後者。迫り来る危機をギリギリのところでくぐり抜ける様は、さしずめ、洪水から救ってくれるノアの箱舟のよう。病気の少年に寄り添う母親がマリア様を表し、ニューヨークに取り残された我が子を救い出しにゆく父親がイエス役という構図。


 どこを見ても不自然で、どのシーンも偽善に満ちている。また、アメリカものは、家族関係がベタベタしていて薄気味悪い。「電話口で一々、『愛してるよ』なんて言うんじゃねえ!」と叫ぶのが常識というもの。


 だから、この映画を物語として見てはいけない。そうでないと、前田有一氏が言うところの「吐き気がする」だけで終わってしまう。これは、現在のコンピューター・グラフィックでどのような演出ができるかを教えてくれるCGショーなのだ。地球の半分が凍りつくシーンは、誰が見ても興味深いものだ。


 また、京都議定書に反対しているアメリカで作成されたことにそれなりの意味はあろう。唯一、評価できるのは、主人公の息子役が、映画の中でどんどん凛々しく成長してゆくところだった。彼女役は可愛ければ誰でも務まるだろう。