中村哲、小野田寛郎


 2冊読了。


 43冊目『医者、用水路を拓く アフガンの大地から世界の虚構に挑む中村哲〈なかむら・てつ〉(石風社、2007年)/凄い人物がいたものである。中村哲アフガニスタンで現地の人々のために医療活動を続けている。米軍との戦闘が激しさを増す中で、中村は衛生面の向上と飢餓を克服するために井戸を掘り、遂には灌漑(かんがい)水利に着手する。タイトルは用水路となっているが、実際は大規模な工事だ。これをペシャワール会というNGOの支援だけで成し遂げたのだ。同会のメンバーであった伊藤和也青年が殺害されたことは、まだ記憶に新しい。事件のあった前年までの労作業が綴られている。中村は実務家である。伊勢崎賢治と同じ匂いがする。戦禍にまみれた砂漠を緑の大地に変えた男の見事な記録だ。


 44冊目『小野田寛郎 わがルバン島の30年戦争小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉(講談社、1974年/日本図書センター、1999年)/帰国後に発表された記録。『たった一人の30年戦争』と重複した内容が目立つので、こちらを先に読んだ方がいい。小野田さんの30年間は、陸軍中野学校の勝利と敗北そのものであった。それにしても、戦闘状態の緊張感を30年間も維持し続けた精神力に驚嘆させられる。写真の姿はいずれも実に姿勢が正しい。投降後の所作も軍人としての様式に貫かれており、最初から最後までルールに則った行動であった。