中丸美繪


 1冊読了。


 44冊目『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』中丸美繪〈なかまる・よしえ〉(新潮社、1996年)/文句なしの傑作。読み終えるのが惜しいあまり、何度となく本を閉じたほど。本書を知らなかったこと自体が恥ずかしい。民主音楽協会編『齋藤秀雄・音楽と生涯 心で歌え、心で歌え!!』(芸術現代社、1985年)を読んで斎藤秀雄のことは知っていたが、弟子が語る斎藤の姿は断片的過ぎて、まるで額縁に収まった写真のようであった。ま、インタビュー集みたいな代物だから致し方ないか。本書は、父・秀三郎(高名な英語学者)にも触れられており、これがまた頗(すこぶ)る面白い。しかも、秀三郎が秀雄の人格形成に影響を与えたことが、巧みに綴られている。中丸美繪の作品は初めて読んだが、実に面白かった。既に絶版となっているが、どこかの出版社が版権を買うべきだと思う。私が過去に読んできた評伝の中では断トツぶっちぎりの一位だ。日本クラシック界の豪華絢爛たる一大絵巻である。