フリーライターの前原政之さんが褒めていたので読んでみた。宋文洲(そう・ぶんしゅう)氏は1985年に国費留学生として中国より来日。その後、天安門事件で帰国できなくなり、日本でソフトを開発して会社を興す。ソフトブレーン(株)は東証マザーズに上場し、現在は東証一部。見事なサクセスストーリーといってよい。その上、私と同い年。
異国から来たこともあって、日本の営業スタイルを客観的に見つめ、おかしなところをズバズバ指摘している。
最初は、この日報は何らかの法的規制かと思いました。何か問題があったら調べられるように、国から義務化されているかと思ったのです。しかし、驚いたことに、単なるこの会社の十数年来の慣習でしかありませんでした。
日報を書く人件費、紙代、そして集める人件費、倉庫の保管料などのコストパフォーマンスを考えると、とても経済活動の一環とは思えない業務です。
日報の目的は、管理職の監視を再確認するだけの行為である。作文している営業マンも多いが、日報を介して上司とやり取りする場合、「お前は本当にちゃんと仕事をしているのか?」というレベルの疑惑に過ぎない。つまり、社員を信用してないからこそ書かせているといえよう。
日本には技術力はあるが営業力はない、との指摘も新鮮だ。基本的に日本人はコミュニケーション能力が低いことを実感する。土地や会社といったものに対する帰属意識も薄らいでいる昨今、コミュニケーション能力を身につけなければ、多数の引きこもり現象が生じることだろう。
後半は自社ソフトを宣伝しながらのIT指南。「ちょっとなあ」って感じは拭えない。それでも、さほどあざとさ感じないのは、宋社長の志が高いためだろう。
もう一つ難を言えば、文体がとっつきにくい。多分、この人は話すことの方が得意なのだろう。ついでにもう一つ言えば、本文全体のセンタリングがちゃんとできていなくて、下に偏っているのも気になってしようがない。
コスト意識を持つには非常に有益な書である。