1冊挫折、4冊読了。
『エシュロン アメリカの世界支配と情報戦略』産経新聞特別取材班/2001年初版ということもあって情報の鮮度が落ちる。退屈な事実を羅列していて、面白くない新聞記事みたいだ。知り得る事実が少なかったためと思われるが、それを汲んでも物語を構成できていない。3分の1まで到達できず。
『ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白』後藤健二/シエラレオネの少年兵が描かれているが、表面をなぞった程度の内容。それもそのはず、小学生高学年向けと思われる一冊だ。20分ほどで読める。表紙の写真が“やぶの殺し屋”と仇名されたムリア君である。眼の下に三日月形の傷がある。これは、戦闘直前に自らカミソリで切り、そこに麻薬を入れて縫い込んだ痕である。反政府軍は子供達を麻薬漬けにして、シエラレオネの人々を殺させた。
『イメージを読む 美術史入門』若桑みどり/山村修著『〈狐〉が選んだ入門書』で紹介されていた一冊。いやはや、これは面白い。北海道大学で行った集中講義を編んだもの。題材は、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画、ダ・ヴィンチのモナ・リザ、デューラーのメレンコリアI、ジョルジョーネのテンペスタ(嵐)。一枚の絵を読み解く作業が実にスリリング。「絵画は、言葉にできない思想である」という主張も腑に落ちる。絵画に興味のない人でも十分堪能できるだろう。
『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』ローレンス・J・ピーター/高校の英語教師・渡辺伸也の訳が読みやすい。「ユーモア社会学の奇書」なんて言われているようだが、そうではあるまい。「現実を見据えた茶目っ気たっぷりのニヒリズム」だと私は感じた。ピーターの法則は実に簡単で、「階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに達する」というもの。そして、ピーターの必然として「やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる。仕事は、まだ無能レベルに達していない人間によって行なわれている」という状況になる。パオロ・マッツァリーノ著『反社会学講座』と併せて読めば、社会学を極めることができるだろう……多分。
『無境界の人』森巣博/ギャンブラーによる日本人論といった内容。書評としても読める。天衣無縫の文体が楽しい。インテリ博徒といった趣あり。奥方は人文学者。考えようによっては、博奕や相場というのは純粋な経済行為である。俗世間よりも俗っぽいにもかかわらず、俗世間を超越した“場”で行われる。ニヒリズムで武装しなければ生きてゆけない世界であろう。単純な行為の繰り返しが天国と地獄に直結する。運不運の波をくぐり抜けてゆく内に、大概のことはどうでもよくなる。その“乾いた魂”こそが森巣博の魅力だ。これは、めっけものだ。