・『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ
・『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ
・順張りの哲学
・『なぜ専門家の為替予想は外れるのか プロが教える外国為替市場の不都合な真実』富田公彦
ワイルダーはRSIやADXを開発した人物である。ま、大御所といってよい。その大先生が何と100万ドルを払って買った理論というのがアダムセオリーだ。高い本なので再度読み直した。
導入部が実に素晴らしく、投資家が陥りやすい心理状況を辛辣(しんらつ)に戯画化している。
彼らは相場観に基づいたトレーディングはけっして行なわない。
「マーケットで成功するには、市場に身を任せることです」
身を任せるということは、ある意味では放棄することです。それは、マーケットに対する意見、判断、そして結論をすべて放棄することです。これは大変難しいことなのです。それは私たちが長い年月をかけて辛抱強くマーケットについて学び、有益な知識として積み上げているからです。
つまり、私たちは知っていると勘違いしている知識をあまりにも多く持ちすぎているのです。知識を放棄することは大変難しいことなのです
【『ワイルダーのアダムセオリー 未来の値動きがわかる究極の再帰理論』J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア(パンローリング、2003年)】
こうなると宗教のレベルに近い。つまり、「欲望から離れる」視点が求められているというわけだ。それを欲望まみれのマーケットで行えというのだから、やはり何らかの達観が必要となるのだろう。
「身を任せる」という言葉で想起されるのは、波乗り、ダンス、空高く舞う鳥といったところか。リズムが一致する時、身体から力が抜け、リラックスしていながらも絶妙な阿吽(あうん)の呼吸が生まれる。シンクロニシティは共時性と訳されているが、時とはリズムを意味し、刻々と一体化する様相を示している。
で、アダムセオリーなんだが、これがまた拍子抜けするほど簡単な理論でにわかには信じ難いところがある。「でもなー、ワイルダーが100万ドルもはたいたのだから、嘘のわけもないしなー」と自分を言いくるめようと頑張るのだが中々難しい(笑)。
多分、フィボナッチ数列やフラクタルと同じ概念なのだろう。回帰理論といってよい。
そもそもテクニカル分析は徹底して過去にこだわり、チャートの中に未来を見出す手法である。なぜなら人間は必ず同じ過ちを犯すからだ。つまり、人類に進歩なんぞあるわけがなく、グルグルと六道輪廻を繰り返すだけだ、という冷徹な現実主義がそこにはある。
だが理論は理論に過ぎない。理論に相場をはめ込もうとした途端にチャートは反転する。市場は生き物である。予想が100%当たるようになれば、それは市場の死を意味するのだ。