心と体の適応力/『文明の逆説 危機の時代の人間研究』立花隆

 私が初めて読んだ立花隆の作品である。それぞれのテーマは実に興味深いものであったが、どうもこの人の「マス視線」が気に入らない。文明を俯瞰し過ぎているように感じたことを覚えている。

 同じストレスを受けても、人によって心と体の適応力がちがう。体が耐えて、心が耐えられないとノイローゼになり、その逆だと心身症の病気になる。で、心臓神経症を直してやるとノイローゼになり、ノイローゼを直すと心臓神経症が再発といったことも起こるのである。


【『文明の逆説 危機の時代の人間研究』立花隆講談社文庫)】


 これは、ガボール・マテと似た指摘だ。通常は、身体よりも心の方が柔軟性に富んでいるため、心理的なストレスは蓄積されやすい。そして、容量をオーバーすると「身体が悲鳴を上げだす」わけだ。


 自然の摂理も人間の心身も絶妙なバランスで保たれていることがわかる。それが崩れると、余計な部分に負荷がかかる。そして、ダメージが継続すると破壊に至るのだ。


 適応とは、環境要因の変化に対して主体的な働きかけをしてゆくことだと思う。進化とは、受動だけでも能動だけでもなく、外部環境の変化を内なる世界に取り込み、そこから更に外へ開いてゆくような感覚ではないだろうか。


 と書きながら、部屋は煙草の煙だらけで、コーヒーをがぶ飲みするのであった。これだけ嗜好品が好きなところを見ると、人間ってえのあストレスが好きなのかも知れませんな。