2冊挫折、2冊読了。
『すべての美しい馬』コーマック・マッカーシー/10ページほどで挫ける。「彼が扉を開けて玄関の広間にはいると、ろうそくの炎と柱間の鏡に映ったろうそくの炎がゆらりと揺れてもとに戻り閉めるときにまたゆらりと揺れてもとに戻った」――コーマックさん、わかりにくいんだよね。文章が長過ぎて、途中でわけがわからなくなる。それを文学的というのであれば、私は口を噤(つぐ)もう。「彼」「彼女」といった代名詞も誰を指しているのかわかりにくく、科白がカギ括弧で括られていないのも更にわかりにくい。多分、「わかりにくさ」こそが文学性なのだろう。
『DNAがわかる本』中内光昭/わからなかったよ(涙)。それでも頑張って84ページまで読んだ。この手の入門書に私が求めているのは、「概略的な説明」ではなくして、「わかりやすい絵を描くこと」である。わかっている。身勝手なのは私の方だ。
『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の科学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン/誠実な学術書である。初めての著書ということなんで、多分「決定版」を目指したのだろう。A5判で316ページは量が多過ぎる。3分の1ぐらいに縮めた抄録版も出して、値段も3分の1程度にすれば、もっと売れることだろう。定価4200円。精神疾患を「脳の病気」と位置づけ、化学療法を推進しきたのが薬品メーカーであったことを暴露している。著者は新たな治療法を提唱しているわけではなく、徹底して慎重であろうとしている。派手さはないが実に好感が持てる姿勢だ。
『洗脳原論』苫米地英人/ベッチー先生のデビュー作。最近の胡散臭さがなく、文章は硬質。ただし例の如く、雲をつかむような内容で、具体的な手法は隠していると思われる。高額なセミナーへ誘(いざな)うのが真の目的か。「わかる奴なら、このくらいでもわかるだろ?」という高飛車な態度が素敵だ(笑)。