古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

安部芳裕、サイモン・シン、立川武蔵


 1冊挫折、2冊読了。


金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った』安部芳裕/ただのトンデモ本だった。徳間書店5次元文庫ってえのあ、トンデモシリーズのようだ。景気が冷え込んでいるからといって、ここまで開き直っていいものだろうか? 極端な単純化によって読者の目を眩(くら)ませようとしている。わかった上で書いているならまだしも、本気で信じているとすれば害悪以外の何ものでもない。80ページで、「阿修羅資料室」からの引用があり、読むことを控えた。

フェルマーの最終定理サイモン・シン/これは面白かった。ここのところ数学本にはまっているのだが、本書は抜きん出ている。ピュタゴラス以降の数学史を鳥瞰し、アンドリュー・ワイルズに至るまでの系譜がしっかり描かれている。日本人が多数登場することに驚いた。著者のサイモン・シンは、ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得している。1967年生まれというのだから、まだまだ今後に期待が募る。


空の思想史 原始仏教から日本近代へ立川武蔵/仏法で説かれた「空」の思想的変遷を概観。まず、文章がいい。内容は中級者以上向け。インド→中国→日本を減るたびに「空」の捉え方も変容している。終盤にかけてやや失速感を覚えるが、これは紙数に限りがあったためだろう。釈尊、竜樹、天台、伝教と辿り、チベット仏教もカバーしている。