痰の吸引は緊急救命措置として行うことが可能

 痰の吸引は、本来「医療行為」とされている。医師や看護師など、医療従事者のみに許される行為なのである。
 しかし、もしそれに従うとしたら、人工呼吸器使用者は、一生病室を出られないことになる。
 そこで鹿野は、例外的に医療行為が許される「肉親・家族」を拡大解釈することで活路を見いだした。つまり、ここに来るボランティアは、鹿野にとって「広い意味での家族」なのである(あるいは、放置すれば死に至る人に、やむなく「緊急救命措置」を施すという解釈も可能)。
 鹿野が「ボランティアは、ぼくの家族」という以上、誰も口出しはできない。吸引ミスなどで最悪の事態が起きても、ボランティアの責任は問わないという強い決意の下で成り立っている。


【『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺一史〈わたなべ・かずふみ〉(北海道新聞社、2003年)】


こんな夜更けにバナナかよ