古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

エド・ロング

エド・)ロングは、世界的に知られるアメリカ・マサチューセッツ州ボストンの「自立生活センター」で障害者のサポートにあたるカウンセラーだった。自らも筋ジストロフィーのため、車いすで生活する重度の身体障害者である。


【『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺一史〈わたなべ・かずふみ〉(北海道新聞社、2003年)以下同】

アメリカでは、障害者でも仕事に就けるんですか?」
「もちろん簡単なことではない。でも、アメリカでは『何ができないか』ということよりも、『何ができるか』が問題なのだ。だから、『できる』と主張する人には、どんな援助をしてもそうさせるだろう」
「主張すれば与えられる。主張しなければ与えられないということですか」
「その通りだ。だからこそ、主張することを恐れてはいけない。階段を昇れないなら、デスクを1階に置いてくれと頼めばいい。また、エレベーターをつけろと主張すればいい。『できない』ということに、必要以上に目を奪われてはいけない」
エドさんにとって、自立とはどういうことなんですか」
「自立とは、誰の助けも必要としないということではない。どこに行きたいか、何をしたいかを自分で決めること。自分が決定権をもち、そのために助けてもらうことだ。だから、人に何か頼むことを躊躇(ちゅうちょ)しないでほしい。健康な人だって、いろんな人と助け合いながら暮らしている。一番だいじなことは、精神的に自立することなんだ」