霊よ、風となって私を吹き飛ばせ


 妻が自爆テロを実行した。それを知った夫の心情――

 交信してくる霊よ、にぎやかな霊よ、この家にとりつくがいい、願わくばすきまを拭き抜けていく風となり、あるいは窓を突き破るほどの嵐となって、私を遠く、うんと遠くまで吹き飛ばしてくれ。今の私の内臓をじわじわと蝕み、私の信じてきたものを壊し、私の心を重大な不安で脅かしているこの疑念から、遠く離れたところまで飛ばしてくれ……。


【『テロル』ヤスミナ・カドラ/藤本優子訳(早川書房、2007年)】


テロル (ハヤカワepiブック・プラネット)