古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2009-12-27から1日間の記事一覧

個人と世界との断絶/『テロル』ヤスミナ・カドラ

水晶の如く硬質で透明な文体、時折奏でられる叙情、そして一筋縄ではゆかないストーリーを揺るがぬ構成が支える。これがヤスミナ・カドラの世界だ。アルジェリア軍の元将校が描く物語は、ピアノソロのように流麗で、控え目に弦楽器が配されている。あるいは…

『大衆の反逆』オルテガ・イ・ガセット/神吉敬三(ちくま学芸文庫、1995年)、寺田和夫(中公クラシックス、2002年)、桑名一博(白水uブックス、2009年)訳

1930年刊行の大衆社会論の嚆矢。20世紀は、「何世紀にもわたる不断の発展の末に現われたものでありながら、一つの出発点、一つの夜明け、一つの発端、一つの揺籃期であるかのように見える時代」、過去の模範や規範から断絶した時代。こうして、「生の増大」…

新訳『隷属への道 ハイエク全集 I 別巻』F・A・ハイエク/西山千明訳

読まずに批判、中傷、誹謗されつづけたハイエクの主著。新自由主義の古典。第二次戦時下のイギリスでケインズ政策がナチズム、スターリニズム、社会主義と同様なべてファシズム(全体主義)にいたる道だと喝破し、大論争を巻きおこした問題作。自由を、市場…

DVDブック『英和対訳 変化への挑戦 クリシュナムルティの生涯と教え』J・クリシュナムルティ/柳川晃緒訳

DVDは2時間半で、日本語と英語の字幕つき。 暴力へと条件づけられた人類の意識の変容を促すべく、イギリス、スイス、インド、アメリカをまわり、講演・討論を行ない、個人的面談に応じ続けた“世界教師”クリシュナムルティ。その90年にわたる生涯のあらましを…

メアリー・ルティエンス

1冊読了。 139冊目『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス/高橋重敏訳(めるくまーる、1988年)/メアリー・ルティエンスによる伝記三部作の第一作。翻訳は『クリシュナムルティ・実践の時代』(めるくまーる、1987年)が先だった模様…