古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

友の足音

 ・ブッダが解決しようとした根本問題は「相互不信」
 ・人を殺してはいけない理由
 ・日常の重力=サンカーラ(パーリ語)、サンスカーラ(サンスクリット語)
 ・友の足音
 ・真の無神論者

『仏陀の真意』企志尚峰
『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』くさなぎ龍瞬
『反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」』草薙龍瞬
『自分を許せば、ラクになる ブッダが教えてくれた心の守り方』草薙龍瞬

 時代の流れとともに、その存在がますます意味を持ってきた思想家ヴァルター・ベンヤミンは、1916年の末に友に宛てた手紙の中で、こう述べています。
「真っ暗な闇の中を歩み通す時、助けになるものは、橋でも翼でもなく、友の足音である」
 ナチスの軍靴の音が高鳴る時代、「アウシュヴィッツの時代」に、アドルノホルクハイマー(20世紀ドイツを代表する社会学者、思想家)などの「魂の友」となり得たベンヤミンならではの言葉です。
 友とは暗闇の中ですがりつく対象ではありません。携帯で呼び出すと、飛んでくるだけの人ではありません。もちろん、友はそういうこともしてくれます。でも、それだけでは「都合の良い人」であっても友ではありません。
 友も歩いているのです。私のように歩いているのです。その存在を想うだけで、その足音だけで、私は一人で歩けるのです。姿が見えなくてもよいのです。離れていてもよいのです。
 私にとって、仏教という宗教は、このベンヤミンの言葉における「友」のニュアンスに近いものがあります。


【『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』友岡雅弥第三文明社、2000年)】


ブッダは歩むブッダは語る―ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う