古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

丸山隆三


 1冊読了。


 86冊目『アメリカ重犯罪刑務所 麻薬王になった日本人の獄中記』丸山隆三〈まるやま・たかみ〉(二見書房、2003年/ルー出版、1998年『ホテルカリフォルニア 重犯罪刑務所』を加筆訂正)/一気読み。文章がカラッとしていて好ましい。日本人にありがちな陰湿さがない。丸山隆三は渡米し、外車の並行輸入をしていた。事業は順調だったが、ふとしたきっかけから麻薬売買のフィクサー(仲介役)となる。一度の取引で、何と1000万円の現金収入が転がり込んだという。やがて年収は10億円を超えた。しかし、ブラックマネーは預金をすることができない。だから、散在の限りを尽くす。1ドル紙幣をたくさん持っていると犯罪者だと睨(にら)まれるため、海辺で燃やしたというエピソードまで紹介している。人気絶頂時の松田聖子と、歌手のマリーンが実名で登場する。麻薬の世界と、重犯罪刑務所の双方で著者は頂点に登りつめる。その意味では、ビジネス書として読むことも可能だ。一人の日本人男性の破天荒な人生が、アメリカ社会の暗部を見事に照射している。