実に後味の悪い本だ。ある種の、読みの鋭さはあるものの、それが過剰な自信に結びつきイヤな匂いを放っている。牽強付会という言葉がこれほどピッタリとあてはまる作品も珍しい。事実の一つひとつを、どうしても筋道立てたドラマに仕立て上げなくては気が済まないようだ。
筆者は、犯人とされる中学生が事実を述べたとしても、それを否定し、自分の推理を声高らかに書き綴る。そう言ったとしても、実際はこうあるべきだ、と。彼にとっては、社会を騒然とさせた事件も、格好のメシのタネぐらいにしか感じていないのではないか? 彼の思考回路からは説明できない事柄は何一つ存在しない。まるで神様みたいだ。週刊誌大好きオジサンなんかには、いかにもウケそうだ。ジャーナリズムの驕(おご)りを知るには、素晴らしい見本と言うべき書物だ。