生演奏の音は「感受される質」

小林●そうです。トランペットの音質を感ずる。音質というものを聴いているんだよ。ナマの音というのは、感受される質なんですよ。計算できるものは量でしょう。量の方を操作して人間の耳が感受できないような音さえ再生する装置はできる。だけれども、そんなものぼくらには一つもいらないでしょう。耳は自分に合った音色、それだけをキャッチするわけだろう。量を研究してみんなナマの音に近づこうとするんだがそうじゃない。実は自分の耳に近づこうとしているんだ。


【『小林秀雄全作品 26 信ずることと知ること』(新潮社、2004年)】


小林秀雄全作品〈26〉信ずることと知ること