理性は対立的

岡●理性というのは、対立的、機械的に働かすことしかできませんし、知っているものから順々に知らぬものに及ぶという働き方しかできません。本当の心が理性を道具として使えば、正しい使い方だと思います。われわれの目で見ては、自他の対立が順々にしかわからない。ところが知らないものを知るには、飛躍的にしかわからない。ですから知るためには捨てよというのはまことに正しい言い方です。理性は捨てることを肯(がえん)じない。理性はまったく純粋な意味で知らないものを知ることはできない。つまり理性のなかを泳いでいる魚は、自分が泳いでいるということがわからない。


【『小林秀雄全作品 25 人間の建設』小林秀雄(新潮社、2004年)】


小林秀雄全作品〈25〉人間の建設 人間の建設 (新潮文庫)
(※左が単行本、右が文庫本)