古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

真の思索者は権威を認めない

 したがってこのかぎりでは、真の思索者は君主に類似している。彼は誰の力も借りず独立の地位を保ち、自らの上に立つ者はいかなる者も認めない。その判断は君主が決定する場合のように自らの絶対的権力から下され、自分自身にその根拠をもつ。すなわち君主が他人の命令を承認しないように、思索者は権威を認めず、自分で真なることを確かめたこと以外は承認しないのである。
 ところが、その他大勢的な頭脳の所有者たちは、世間通用のあらゆる意見や偏見、権威にとらわれていて、法や命令に黙々と服従する民衆に近い。


【『読書について』ショウペンハウエル/斎藤忍随〈さいとう・にんずい〉訳(岩波文庫、1960年)】


読書について 他二篇 (岩波文庫)