・『レイチェル・ウォレスを捜せ』ロバート・B・パーカー
・『初秋』ロバート・B・パーカー
・『チャンス』ロバート・B・パーカー
・『突然の災禍』ロバート・B・パーカー
・『スクール・デイズ』ロバート・B・パーカー
スペンサー・シリーズの第33作目。訳者は逝去した菊池光から加賀山卓朗にバトンタッチ。かなりあっさりした訳文となっている。「心が純粋」といった表現は避けてもらいたいところ。「心が澄んでいる」、あるいは「心が清らか」にすべきだ。でもまあ大過なく仕上がっている。
私がスペンサー・シリーズを読み始めたのは二十歳(はたち)の時だった。ロバート・ラドラムの『暗殺者』が出た頃だ。もう25年が経過する。
変わらぬスペンサーの姿と触れるたびに、変わり果てた自分と、まだ変わっていない自分とが行き交う。若い頃ほどの昂奮は覚えないものの、今の方が味わい深く読める。自分の中で曲げてこなかった何かが共振するのだ。
『キャッツキルの鷲』に登場したギャングのメイジャー・ジョンソンが出てくる。スペンサーから頼まれて、メイジャーは配下のヤンに引き合わせる。
「こいつが何か言ったら」メイジャーが言った。「それは真実だ」
「あんたがそう言うなら」ヤンがメイジャーに言った。
「信じろ。こいつが何か言ったら、おまえはそれをチャチャ・ファースト・ナショナル銀行に持っていって預けられる」
ヤンはうなずいた。
【『スクール・デイズ』ロバート・B・パーカー/加賀山卓朗訳(早川書房、2006年/ハヤカワ文庫、2009年)】
スペンサーの言葉には貨幣と同程度の価値がある(笑)。ロバート・B・パーカーは、まだまだ健在だ。