古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『仕掛け、壊し、奪い去るアメリカの論理 マネーの時代を生きる君たちへ 原田武夫の東大講義録』原田武夫

 最近の日米関係を通して綴る金融経済入門。右ページが全て用語解説となっていて初心者でもわかりやすい構成。著者は元外務官僚で、政治の舞台裏からアメリカの意図を読み解いている。尚、この講義は正規単位として認められている。アメリカの巧妙な手口は、最終的に狙った国を「焼畑農業」状態にする。日本の近現代史にも触れており、目が行き届いている。原田氏は1971年生まれというのだから、大したものだ。

 実は、日本人以上に日本における教育に関心を持っている国が米国である。教育史の本を読むと、明治期の近代教育システムの立ち上げから始まって、大正期、そして敗戦後の「アメリカ教育使節団」の派遣、更には中曽根政権の下での「臨教審」の答申に至るまで、日本の教育史では重要な局面になると必ず米国が顔をのぞかせてきたのだ。日本人からすれば、「何も他国の教育にまで首を突っ込まなくても」と思えるだろうが、米国からすれば事情は全く異なる。日本が米国以外の国をモデルにしないように仕向け、同様に優秀な日本人は皆、米国の教育システムへと吸収するシステムを作り上げること。――これが米国の対日統治政策の根幹にあるのである。

 小泉政権によっても成し遂げられなかった憲法改正ではあるが、各政党はそれぞれ、改憲草案を作り上げ、既に発表してきている。大手メディアはこれらの草案の中でも平和主義をうたった「第9条」だけを取り上げてきた。しかし、実際にはもっと大きな問題が、とりわけ自民党の「新憲法草案」にあるのだ。
 国の予算は、毎年の会計年度が始まる4月1日より前に国会の承認を得なければならない。ところが「新憲法草案」第86条第2項によれば、「仮に前年度中に承認が得られなければ、内閣が当分の間、必要な支出をして良い」ということいなっているのだ。これに国会は事後的に承認をすれば良いという。
 大手メディアや憲法学者たちは、表立ってこのことについて全く問題視していない。しかし、この規程によって内閣は予算による縛りを国会からは事実上受けなくなる。なぜなら、国会が予算を認めなくても、内閣は必要経費を振り出すことができるからだ。これで、内閣、そしてこれを仕切る内閣総理大臣の力は絶大なものとなる。