『渾身』川上健一

 251ページの短編小説と言っておこう。隠岐島(おきのしま)で行われる相撲大会の一番が描かれている。古典相撲は、神に捧げる栄光の祭典だ。迫真の大勝負、島民の熱狂、見守る家族――どこを取っても、日本人特有の湿っぽさに包まれている。親友が産んだ琴世と再婚相手の多美子のやり取り、主人公と3組の両親、地域と主人公夫妻の距離など、どこをとっても“しがらみ”だらけの世界である。


 だが、そこに感動を覚えるのだ。二人の力士が裸で四つに組む。双方の肩には、それぞれの地域の期待や、人生の陰影が複雑にのしかかっている。勝負は二転三転する。島で受け容れられなかった夫婦の努力を象徴しているようだ。


 昨今の相撲協会のドロドロにうんざりしている方は、是非一読されたい。手に汗握りながら一気に読める。


 これを堪能した人は、不朽の傑作『雷電本紀』(飯嶋和一著)をどうぞ。