古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

タゴール

 人間の歴史は、侮辱された人間が勝利する日を、辛抱づよく待っている。


【「迷える小鳥」/『タゴール著作集』第1巻所収/藤原定訳(第三文明社)】


 タゴールはアジアで初のノーベル文学賞を受賞した詩聖。その巨大な足跡は、死して尚、世界の瞠目を集めている。


 インドは、豊かな精神世界とカースト制度を併せ持つ国だ。非暴力を説いたガンジーも、凶弾という暴力によって殺害された。相反する価値観が共存する現実の中で、詩聖の心に去来したものは何か――それは、人間扱いされない虐げられた人々への限りない共感であり、人間が人間らしく生きてゆける世界への渇仰であり、正義が正義としてまかり通る真っ当な歴史への期待と確信であった。


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