古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

氷河期から非氷河期までは、3000年でも300年でもなく、たった3年だった

 1989年、アメリカはグリーンランドの氷床の3200メートル下、つまり11万年前までの気候履歴を集めるためのアイスコア採掘プロジェクトに乗り出した。ちなみにそこから30キロ離れた地点では、ヨーロッパのチームが同様の調査をしていた。4年後、両チームとも目標深度にたどりつき、急激なという形容詞の定義はふたたび変わろうとしていた。
 調査の結果わかったのは、最後の小氷河期ヤンガー・ドリアスはたった3年で終わっていたということだった。氷河期から非氷河期までは、3000年でも300年でもなく、たった3年だったのだ。おまけに、ヤンガー・ドリアスの到来には10年しかかからなかったことも明らかになった。急激な気候変動は実際に起こるという証拠はこれで確実となった。これ以来、科学者は「急激な」という形容詞を使うのをやめ、「突然の」という形容詞を使うようになった。ワート博士は2003年の著書の中でこうまとめている。

 1950年代の科学者が数万年と信じていた気温の変動期間は、1970年代に数千年、1980年代に数百年になったが、いまやたった数十年であることわかった。


【『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス/矢野真千子訳(NHK出版、2007年)】


迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか