「反共感」という残酷なメカニズム。人間の持つ暴力性がまた一つ明るみに出てきた。
「敗者」の悔しい表情を見た「勝者」の脳の反応を、放射線医学総合研究所(千葉市)の研究チームがとらえることに初めて成功した。
脳の前頭葉と呼ばれる部位で通常より強い電気信号が現れ、自己愛(ナルシシズム)の強い人ほど反応が大きかったという。神戸市で4日開かれた日本神経科学学会など3学会の合同大会「ニューロ2010」で報告された。
他人の幸福や不幸に対し、同じ気持ちを抱く心理状態が「共感」と呼ばれるのに対し、野球やサッカーなどの試合で勝者が敗者の悔しい表情を見て喜ぶ感情は「反共感」と呼ばれている。
研究チームは、反共感の際、実際に反応する脳の部位を確認するため、トランプで数の大きい方が勝ちとなる単純なゲームを実施。敗者の悔しげな表情を見た勝者では、前頭葉の前部帯状回と呼ばれる部位に現れる「フィードバック関連陰性電位」という電気信号が、通常よりも強く脳波計で測定された。
被験者に自己愛度を測る心理テストも受けてもらったところ、自己愛の強い人ほど、この電位が高くなった。一方、相手に同情しがちな人では、電位はあまり変わらなかった。
チームの山田真希子研究員は「自己愛性人格障害など様々な対人関係障害の病態理解につながる」と話している。