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日蓮宗不受不施派と日奥

日蓮宗不受不施派」とは、京都の日蓮宗寺院である妙覚寺の19世仏性院日奥(1565-1630)を派祖とする日蓮系の一派をいう。もともとは、不受不施の教えを主張する日奥に共鳴した僧俗のグループで、不受不施派という日蓮宗のなかの一つの派であった。
 しかし江戸時代になると、幕府はこの不受不施派の活動を警戒し、その布教活動を禁止するようになる。そのため、「かくれキリシタン」と同じように地下に潜って秘密教団を形成するようになっていった。ふたたび地上に姿を現して公(おおやけ)に布教活動を行うようになるのは、明治になってからのことである。
 明治9年(1876)、明治政府によって宗名の公称を許されると、岡山県御津(みつ)町の金川(かながわ)に祖山妙覚寺を創立して、「日蓮宗不受不施派」を公称するとともに、独立した宗派として教団の再興をはかった。これが、今日の日蓮宗不受不施派である。


【『反骨の導師 日親・日奥』寺尾英智〈てらお・えいち〉、北村行遠〈きたむら・ぎょうえん〉(吉川弘文館、2004年)】