1冊読了。
120冊目『人生論ノート』三木清(新潮文庫、1954年)/20代で一度読んでいるが、全く異なる感銘を受けた。自分の精神的な変化を思い知らされたような気がする。短文であれば、何か普遍的なことを書いているように思いがちだが、本書には思想的格闘を経た強靭な下半身の力が窺える。これと、正反対の位置にあるのが武者小路実篤の色紙であろう。「仲良きことは美しきかな」――ハイ、ご苦労さん。ひとたびは、マルクス主義者として転向を余儀なくされた三木は、戦時中に治安維持法違反の廉(かど)で逮捕され、終戦直後に獄死している。その意味で彼は、人間の弱さと強さとを誰よりも知悉(ちしつ)していた。そんなふうに思えてならない。