古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

リスクから逃げることが最大のリスク/『1年で10億つくる! 不動産投資の破壊的成功法』金森重樹

 これは面白かった。「よーし、じゃあ一発、不動産で儲けるか!」って気になるよ。しかし、大事なところはそこじゃない。ものの見方を変えてくれる内容が随所にあるのだ。著者は1970年生まれというのだから大したものだ。もちろん、ゆくゆく不動産購入を考えている人にとっても有益である。

 日本のエリートと呼ばれる上場企業のホワイトカラーのサラリーマンなどは最も「リスクから逃げ回っている」部類の人間たちです。
 リスクから逃げ回る人生を送ってきた人たちが、終身雇用制、年功序列制賃金が崩壊した現在、いったん会社から放り出されると、もはやリスクに対処するすべがありません。どんなに立派な学歴があろうが、どんなに立派な上場企業に勤めていた経歴があろうが、そんなものは会社から放り出されてしまえば何の役にも立ちません。
 価値がないのです。
 逆説的ですが、リスクから逃げることが最大のリスクなんですね。


【『1年で10億つくる! 不動産投資の破壊的成功法』金森重樹〈かなもり・しげき〉(ダイヤモンド社、2005年)】


 気持ちのいい文章だが、既に成功を収めている人物が書いていることを忘れてはならない。リスクを取れば儲かるというわけではないからね。大事なのはリスクマネジメント。だから、「リスクから逃げることが最大のリスク」という言葉は、文学的な表現と心得るのが正しい読み方だ。文意は、「何もしない人間にチャンスは巡ってこない」というもの。金森氏が提唱するのは、「どうせ家を建てるなら、大家になれよ」ってこと。