こうした作品にそれなりの意味はあるのだろう。テロや戦争の犠牲となった遺体の写真集だ。現代社会は死を隠蔽するから、「これが現実なんだぞ!」と言われれば、「はい、そうですか」と答えるしかない。
出版当初、大手取次のトーハンが委託を拒否した。
私は勝手に、「米国のイラク攻撃と、それを真っ先に支持した日本政府にとって都合が悪いのだろう」と善意の解釈をしていた。
その時点で、第三書館の社長である北川明氏が、社民党の辻元清美氏と内縁関係にあることも知っていたし、北川氏が元日本赤軍のメンバーだったことも既に知っていた。
でもね、いくら何でもこりゃあないよ。掲載されている写真の全てが、米国のWeb上から拝借したものなのだ。どおりで見たことのあるものが多いわけだ。キャプションだって、正しいかどうかも定かではあるまい。
バラバラになった遺体、黒焦げと化した自爆テロ実行部隊、吹き飛ばされた顔、胴体と切断された生首、飛散した肉片をくわえて走り去る犬……。人の形をした遺体に尊厳があるとすれば、ここにある死体は、文字通り木っ端微塵にされた尊厳だ。
テロや戦争の現実を知るためには、見るべきなのかも知れない。だが、出版の意図がひたすら憎悪を煽ることであれば、あまりにも拙劣だ。
短いテキストを執筆したのは、板垣雄三、酒井啓子、古川利明、湯川武、吉川雄一の5氏。ひょっとして、全員左翼なのか?