古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

『究極の大陰謀 9.11テロの最終審判』デーヴィッド・アイク

《9.11》や「テロとの戦争」の話題に進む前に、もう少し湾岸戦争の話を続けるのがいいだろう。この二つは構図がまったく同じだからだ。メンバーも同じなら、計画もやり口も無実の人々の虐殺という点も同じだ。第一に、湾岸戦争は正確には戦争とは言えない。アフガニスタンのときもそうだったが、「戦争」ならほぼ両陣営は互角のはずだ。この定義に従えば、湾岸戦争は「戦争」ではなかった。
 軍事力で言えば、マイク・タイソンと老婆がリングで戦ったようなものだ。アメリカ兵はあの「戦争」を「七面鳥撃ち」と言っていたが、まさにそのとおりだった。イラク軍の主力は無理矢理集めた徴兵部隊で、装備も、英米製とはいえ象を前にした玩具(おもちゃ)の銃のようなものだった。女性は子どもも含めたイラク市民は人類史上最悪の集中爆撃にさらされ、空爆による死者は数万人にのぼった。
 マスメディアはアメリカ軍から受け取る「スマート爆弾」の映像ばかり流していた。これは特定の建物を目標にするもので、トイレの窓にでも入れられるほど正確な爆弾ということだったが、実際には違った。軍部は毎日の報道を検閲して真実が伝わらないようにしていたが、イラクの空から降り注いだ爆弾のうち少なくとも93%は「スマート」ではなく、70%が目標を外していた(これは国防総省自身の数字だ)。これ以外にもイラク国民に対してはさまざまな兵器が使用された。気化爆弾もその一つで、ウェイド・フレーザーによる優れた湾岸「戦争」研究でその実態が明らかになっている。

 この爆弾の仕組みはこうだ。爆発が二度起こる。最初の爆発で燃料の細かい霧が空気中に広がり、(サッカー場くらいの)範囲が着火寸前の混合気状態になる。第二の爆発でこの混合気に火がつき、大爆発が起こる。爆発力は「通常」火薬のなかでは最大級だ。
 爆発によって起こる風圧は、最大で1平方センチ当たり14.4キロにもなる。通常の人間に耐えられる風圧は1平方センチ当たり3キロだから、この急激な気圧上昇だけで、爆発地域の人間はほとんど死んでしまう。爆発によって空気中の酸素が奪われてしまう上に、運悪く地域内にいた人間は口から肺が飛び出すこともあるようだ。アメリカ軍はこれを(1991年の湾岸戦争で)無防備なイラク国民に対して使用したのである。


 これと同じものはアフガニスタンでも使われた。イラク人はあなたや私と同じ、生きて呼吸している人間なのである。これ以外に使用されたものでは「ビッグ・ブルー」というものがあって、これはほとんど核兵器並みの衝撃波を作り出す。ウェイド・フレーザーは、「ビッグ・ブルー」の衝撃波は人間の身体をハンバーガーにしてしまうほどだと指摘している。
 また、いわゆる「バウンド爆弾」も配備されていた。人間の腰の高さまで一度「バウンド」してから爆発し、確実に周囲の人間を粉々にするというもので、イルミナティのフロントマンたちが使う世論操作用語(ニュースピーク)では「対人用」兵器というきれいな名称で呼ばれている。さらに「ハチの巣」というのもあった(今もある)。これは8800個もの鋭利な破片を四方八方に飛ばすもので、人間の身体をバターのように切り刻む。
 湾岸「戦争」ではこうした兵器が女性や子どもを含めた民間人に使われ、それ以降も「テロとの戦争」を含めたさまざまな場所で使われてきている。